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「野口さん・・・・」
悠と呼ばれた女性と、野口と呼ばれた男性のやり取りを見て思わずキョトンとしてしまう翔太。
「すまない、驚かせてしまったようだ」
「いえ・・・・・」
「まぁいきなり言いがかりをつけられるとな」
「・・・・っ!!でも野口さん!!」
「悠さん、物事には順序がある。ここは津木ではないんですよ?」
「はい・・・・・・・」
怒りで顔を真っ赤にしながら、そのまま悠は自分のテーブルへ戻っていった。
「あの、野口って『OVER FLOW』のリーダーの・・・・・」
恐る恐る、翔太は野口にたずねた。
「ああ、と言っても名前だけのものだけどね」
カラカラと笑いながら野口は答えた。
「そういえばさっきの方は・・・・・」
「ああ、悠さんか。彼女についても追々紹介していこう」
「追々??」
「君たちを、『OVER FLOW』に迎えたい」
真人は気づいた。さっきの水越にいた男。
「あんた、さっき水越で俺たちを見てただろ?」
「な、何言ってんだよ朝田?誰もいなかっただろ?」
「よく見てたね、その通り。メンバーが少なくなってきていて、良かったらと思ったんだが。
土曜に津木でミーティングを開くので、返事はそのときにでも」
と言い残し、野口は自分の席に戻る。
「朝田、これってチャンスだよな?」
嬉しそうに翔太は話す。
「・・・・・・入ったからって有名になるわけじゃない」
「そうじゃない、俺、野口さんに憧れて走り始めたんだ」
「初耳だな」
「17の時に津木でギャラリーして、その時に野口さんの走りを見たんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「他の人も凄い上手かったけど、野口さんの走りが飛びぬけてたんだ・・・・・・」
「良かったじゃないか」
「俺の中じゃ人生初まって以来のチャンスだと思う」
「じゃあ、今週の土曜日」
―――そのとき2人は気がつかなかった。2人を睨みつける、冷たい目の存在を。
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