『霧島司という男』

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第2話  『霧島司という男』 真人の昼間の顔はあまり喋らないただの市役所職員である。 手当なんかより自分の時間を大事にする人間だ。 自宅に帰り、夕食を済ませる。 「ふぅ・・・・」 なぜか落ち着かない。 気分や感情は表に出さない方なので、いつ見ても同じような顔をしているのだが、今日だけは緊張の色が見える。 妙な胸騒ぎがする。 期待ではない、なにかが起こりそうな予感。 夜9時を回った。 その緊張は落ち着かないまま、こないだの●ーソンへ。 いつも通り、翔太は先に来ていた。 「来たか朝田」 「ああ、今日は津木だな」 「いよいよって感じだ、行こうぜ」 津木峠。 山頂のパーキングエリアに到着した。 土曜日だと言うのに、走る方もギャラリーも少なかった。 「ようこそ、津木峠へ」 笑顔で野口が迎えてくれた。 「こんばんは、よろしくお願いします」 翔太が丁寧に挨拶した。 「まぁ、そう固くならないで。誰も不愉快には思わないよ」 「はぁ・・・」 「こないだはごめんなさい、私の勘違いで・・・・・・」 悠がこちらに向かって歩いてきた。 真人はそれを見て顔をほんのり赤くしている翔太を見た気がしたが、気のせいということにした。「い、いえ、気にしてませんから」 「そう、なら良かったわ」 「そういえば、この街でも有名な峠にどうしてこんなに走り屋が少ないんだ?」 さらりと真人が言った一言に、野口は少々バツの悪そうな顔で答える。 「ああ、先輩達のせいだろうね。 この問題は話せば少し長くなる。 今言える事は、『OVER(ウ) FLOW(チ)はもう『3大勢力』なんて括りからはとうの昔に抜けているんだ』ってことか。 さて、自己紹介でもしてもらおうか」 野口の答えに少し混乱する真人と翔太。 野口が強引に話を変えようとしたので、その流れに一旦は乗ることにした。 「荒瀬翔太です。そこの黒い180SXが愛車です。よろしくお願いします」 「朝田真人。クルマは赤いNBロードスター、よろしく」 「じゃあ我々の番だね、 『OVER FLOW』は構成員5名、この津木峠を拠点に活動中で、私は野口 正和(のぐち まさかず)、車はそこのシルビア。 一応リーダーということになっている」 (構成員って、『ヤ』のつく自由業じゃないんだから・・・・) と思いながら、翔太は自己紹介に耳を傾ける。
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