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音で言えば、めりめりというか、バリバリっとなにかが破れるような音だ。
そんな音につられるように、光一は反対に歩き出そうとする足を止め後ろを振り返る。そこで恐ろしいものを見ることになる。
二人がキスをしているちょうど真ん中の辺りの奥、およそ一歩分ほどのところに指みたいなものが現れドアをこじ開けようとしているかの如く、両手で開けようとしている姿が見えたのだ。
もちろんそこにはドアなどなくただの空間に手だけが浮いている状態。それがやがて手の平、腕、ヒジまでが見えてきたのだ。
「な、なんだよ? これは!?」
光一がおどろくのも無理はない。なぜなら30センチほどに離れたヒジとヒジとの間から、ギョロっとした目が覗いているのが見えたからだ。
何もない空間に浮いたようにしてあるので、気持ち悪さが倍増している。その目を隠さんばかりに無造作に乱れた髪の毛が、ゆらゆら揺れているのが見えている。
その顔つきからするには女性だということは光一には分かった。しかし、とても生きているようには見えず、どう見ても幽霊のような生気のなさである。
光一は驚き、戸惑いながらも考える。
(なんだ? この女の人は!? これって……柏原さんの幽霊じゃないよね? じゃあ一体!?)
その異質なモノの存在など全く気づいていない千波と刈屋は、未だ抱きしめあったまま唇を重ねあい、気持よさそうな顔を浮かべている状態。
(何だよ!! 刈屋の奴は!! もう離れろよ!! て言うか気付かないの? 変なのが奥にいるのにさぁ)
最悪な行為をしている者達から目を離したいのに離せない状況の光一。これには奥で目を光らせているモノの存在があるからだ。
悔しいのか、怒りたいのか、または驚きか、心配か。どれをとっても当てはまる感情などなく、イライラ感だけがどんどん増していく)
(あぁ駄目だ!! 腹が立つ!! 消えてよ! 刈屋!!)
その時だった、光一は背筋を凍らせるようなものを見ることになる。
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