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女性は部屋の中を見ている。
その表情と言えば、目は飛び出そうなくらいに開き、大きく開いた口を震わせ、恐怖におののいた様子である。
女は床にしゃがみこみ、言葉を発する事も出来ないようだった。
「な、何している? は、早く……逃げる…ぞ……?」
男が言葉を詰まらせながら、そう言い女性に手を差しのべた。しかしその手を見ることなく
「ヒィッ!!」
と声をあげる女性は、大きく震え、今にも失神寸前であった。
「ど、ど、どうしたんだよ?」
不安を隠せないままに気遣う男性に、やっとの思いで声を出す女性
「あ、あ、あれ……。あれ……』
と部屋の方を指差した。
「ん?」
と男性が振り向こうとした瞬間。
“ゴツッ!!”
という鈍い音が聞こえたのと共に、男の持っていたカメラが床にふき飛んだ。
「いやぁぁぁーっ!!」
泣き叫ぶ女性の声だけが聞こえてくる。
そしてすぐに床に何かが落ちるような音が聞こえた。
おそらく男性が倒れたのであろう、女性の悲鳴だけが聞こえてくる。
床に転がったカメラは、静かに壁を映している。
その時だった。再び粘土を床に落としたような、なんとも鈍く痛々しい音が近くで聞こえてきた。
それと同時に、今までうるさいくらいに叫んでいた女性の声が、急に途切れた。
そして……。
壁を映していたカメラに、
女性の顔が飛び込んできた。
目は見開き顔は怖いくらいに硬直している。
息をしていない事が見て分かる。
そして頭から赤黒い液体が流れ、顔を伝う。
とても辛く痛々しい映像であり、目を閉じたくなる状態。それを察したかのように、映像は一瞬大きな物音をたて、すぐに途切れた。
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