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初恋の男性をパートナーにしたいのに、既に女がいる。
恋する魔法少女かるまの前途は多難であった。
「うっわ…こりゃひでえなあ…」
克也が顔をしかめながら言う。
「せっかくのナイスバディも顔が柘榴の様にグシャグシャじゃあなあ…。ああ勿体ない勿体ない」
「奥部刑事。不謹慎ですよ」
女刑事の巴がジロリと睨んで注意する。
「以前と同じ、浮気をしてた女とその相手が殺害される。とても惨たらしい方法で。そして、真っ先に容疑者候補に上がる恋人に完全なアリバイがある。じゃあ殺したのは誰?何のメリットがあるの?」
自問自答する巴。
「仕事人気取りの連中じゃないすかね?」
床に落ちてた爪を拾いながら克也が言う。
「でもさ、その線として、これまでも容疑者候補の恋人や知人連中に組織か何かに殺人依頼をしたのか?って聞いてみたじゃない。だけど、みんなシロ。嘘発見器にも引っ掛からない。一体どういう事?『何』が殺人を犯してるのよ?」
「あー…ひょっとしたら…んー、でも…」
「何よ。言ってみなさい」
「聞きたいっすか?」
「今は眉唾な情報でも欲しいのよ」
「じゃあ…」
巴の肩に手を回す克也。
「デート一回で…ぐぎゃあっ!」
思いっ切り克也の手の甲を抓る巴。
「私はそういうのが嫌いって何度言ったら分かるのよ!」
「一回位いいじゃないすか!ケチ!それとも、誰か良い男でも…」
「………フン、いないわよ…そんなの」
顔をしかめながら言う巴を不審そうに見ながら、克也は言った。
「人外、じゃないかと思っただけす」
「なるほどね」
「あれ?バカバカしいって言われるかと思ったのに意外なリアクション」
驚く克也に巴は言った。
「私も我ながら荒唐無稽だなって思いながらも、その線もあるんじゃないかって思ってるもの。けど…」
もしそうなら、捕まえられるのか?
生身の肉体で不可思議な術やら何やらを使う奴等に対抗出来るのか?
「でも…」
死体を見る巴。
例えどんな悪い奴だったとしても、法による裁きを受けずして処刑なんて許されてはいけない事だ。
殺人は殺人だから。
「捕まえなくちゃ、ね」
証拠を残さずに殺人を行なう謎の犯人を必ず逮捕する。
巴はそう心の中で呟くのであった。
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