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「ひ…酷い…酷いよぅ、せんぱいぃ…」
チャラ男の無慈悲な言葉に涙を流す真緒。
「な、なあ、アンタ!これでいいだろ?もうこんな女に未練はねえよ!だから…」
「悪いねえ。そうもいかなくてさ」
女が合図すると、二人の前にショートカットの女が現われる。
「あ、茜…」
「いいザマね、先輩に真緒」
蔑む様な視線で二人を見る茜。
「直哉はもうほっとこうって言ったけどさ、私がアンタらの存在を許せないから。どっちみち、先輩には消えて貰うつもりだったしね。紫(ゆかり)さん、殺っちゃって。もうこんな男の顔見たくない」
「オッケー」
「や、やだよ!俺…俺…」
バキッ!ドガッ!
女―紫によるチャラ男への死刑執行を横目に茜は呆然としている真緒の眼前に立ち、言った。
「あまりにも無様で笑っちゃうわ、泥棒猫。でもいいわ。お陰で直哉が手に入ったし」
「なお…や…?」
「そう。アンタが裏切った直哉。アンタの幼馴染みで相思相愛だった筈の直哉よ。私、アンタに先輩を寝取られて寂しかったのもあるけど、傷心の直哉を一生懸命慰めてあげたわ。その内に情が移って、気付いたら直哉に惚れてた。そしたら、アンタ達の存在が急にムカついてきて。アンタ達を一言も責めない直哉が可哀相になってきて。だから私が代わりに直哉の無念を晴らしてやろうと思ってさ」
茜の話を無表情で聞いている真緒。
既に心が壊れかけてきているかの様だ。
「…で、その女も殺るの?」
処刑を終えた紫が、茜の側に立つ。
チャラ男の頭は潰れたトマトの様にグシャグシャになっていた。
「ええ、殺るわ」
茜が残酷な笑みを浮かべる。
「精神的に…ズタズタに殺してやる」
数日後。
チャラ男こと黒塚某の惨殺死体が発見された。
警察は怨恨の線で捜査を開始したが有力な情報は得られていない。
何せ、彼に怨恨を抱く人間が多過ぎて、一人に絞れないからだ。
そして――
「私…どこで…間違ったのかな…」
虚ろな目をして、精神病院のベッドに座る真緒。
あの後、インターネットに真緒とチャラ男の恥ずかしい映像がばら蒔かれ、親から勘当され、居場所を失い、心がボロボロになった。
そして、妊娠も発覚したが、中絶し現在に至る。
チャラ男殺人の唯一の目撃者であるが、どうにもその場面だけ記憶が欠損している様だった。
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