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首を傾げるかるま。
「いやあ…もう…やだあ…どうして?どうしてこんな目に私が……そうだ!助けてえええっ!誰かあああっ!」
急に叫び出す女。
だが――
「ん~、惜しい!も少し早ければ助けを呼べたかもしれないのにねえ。でも防音結界張ってるから、私達が貴女にどんな事しても外には聞こえないのよ、こいつがね」
そう言ってクックックッと笑うゆり姉。
「ゆり姉意地悪。結界張ってから侵入してるから、万が一助かる事なんて有り得ない」
「ダメよぅ、ばらしちゃ。希望が絶望に変わる瞬間の表情を見るのがエクスタシーなのにさ」
大きな胸を抱くかの様にして悶えるゆり姉。
「うそ…や…助けて…アキトぉ…」
「その、アキトさんか依頼人なの」
精神が崩壊しつつある女の眼前でバットを振り上げるかるま。
「最後のメッセージ。僕は仏じゃないから、一度は許せても二度目は無理。好きだったよヒカル。だってさ。アハハ、もう貴女は過去で語られる女になった訳だ」
「やあ…あ…ごめん…なさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな…」
「私の名はかるま。私の名はかるま。私の名はかるま。魔法処刑人のかるま。脳裏に焼き付けて逝きなさい」
そう言ってかるまは何度も何度もバットを女の頭に振り下ろした。
「ふう…」
ゆり姉と共に魔法による事後処理をした後、スク水を脱ぎながら疲労の表情を浮かべるかるま。
「早い所パートナーを見つけないとね。魔力の補充が出来ない今の状態じゃ、かるまの身体にかなりの負担がかかるもの」
かるまが脱いだスク水を丁寧に折り畳むゆり姉。
「ん…分かってる」
気怠そうな表情をしながら返事するかるま。
「マミーがさ、せっかくあの人がいる学校の近くに引っ越したんだからさ。かるま高三なのによくもまあって思ったけどね。それに昔少ししか顔合わせなかったあの人の居場所をよく見つけてきたもんだってね。流石は先代の魔法処刑人」
「私にとっては宝石より貴重な思い出」
高校の制服に着替えながら、かるまが言う。
「そんなに好きなの?うー兄さんの事」
「好き」
短い、だが情感の籠った声で一言言うかるま。
「でも………」
表情が暗くなるかるま。
それもその筈。
うー兄さんと呼ぶ男には既に付き合っている女がいたからだ。
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