THE 1ST 起点

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だいぶスピードが残ってる。 確実にぶつかるだろう距離に素で、あっ僕死んだ、って考えてしまう。 そこには絶望や哀しみ、怒りや悔しさは何も出てこなかった。 ただ…こんなつまらない人生がこんなつまらない終わり方をするのか、ぐらいにしか思わなかった。 トラックの運転手が焦っているのを落ち着いた表情で睨み付けながら少し震えた。 その時… 僕は生まれて初めての経験をする。 周りの景色がいきなり色を変えて緑と白でできた世界になり、周りの物がゆっくりに見えたのだ。 周りの物はまるで別次元にあるかのような感覚、自分が世界を操っているように錯覚しそうだった。 ゆっくりと言ってもトラックや普通の車の動きは実際のスピードの2分の1くらいはあると思うがそれでもだいぶ遅かった。 そのスピードになったトラックをかわす事は難しいことではなかった。 僕はその不思議な感覚を気にしつつ急いで自転車から降りて横に逃げた。 そしてまた世界が色を取り戻して時間も普通の速さに戻ると、トラックは自転車をグシャグシャに壊しながら塀にぶつかった。
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