第一章・プロローグ

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数回深呼吸して、部屋を見渡す。 一瞬そこが魔王の城ではなく、教会に思えた。 部屋、と言うより大広間の中央に膝を付き 胸の前で指を絡める銀髪の女性がいたからだ。 神の御前とでも言う様な神聖な雰囲気があった。 「勇者か?」 女は身動き一つ見せないまま、静かに訪ねてくる。 「ま、魔王はどこだっ!言えば命だけは助ける」 「ふ、追うか?」 言葉を告げながら、少女は正面を指差した。 指の先にあったのは、魔王が座っていただろう椅子。 その横で眠る様に 倒れた男。 「王は先刻亡くなられた。 貴様も追うか? なんなら手伝ってやってもいいぞ?」 全力で頭を振った。 「懸命な判断だ」 ニヤリと口元をつり上げると 背筋に冷たい物が触れた感覚を感じた。 女は立ち上がると、俺を見た 猫の様な細く鋭い瞳孔 虹彩が黄金に似た色の為に 瞳孔が際立つ。 餌を見る様な視線に思わず一歩後退さる。 「そう臆するな、仮にも勇者であろう?」 女が妖艶な笑みを浮かべ 一歩 二歩と俺に近づいてくる。 背中には閉ざされた扉 その向こうには魔族の群れ だが 戦うなら、背後の魔族達の方が良い と、直感が言う。
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