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「サエグサくん、君ね。もう少し物は丁寧に扱いたまえよ。」
やや呆れる汁木博士。だったが、真っ直ぐに研究に燃える野心家三枝研究員の姿勢は評価していた。
「いえいえ、博士。これは一刻も早く見て頂きたい新薬だったので。」
「ほう、出来たのか。そう言えば私も今し方かねてより研究していた新薬の開発に成功した所なのだよ。」
「そうですか、ふふふ…ほぼ同時に開発した我々の薬。
ところでシルキ博士の薬と私の新薬は一体どちらの性能の方が上なんでしょうかね…?」
「いや、何も競う訳じゃ無いだろう。我々がしているのは人類への貢献だよ」
「ふふふ、逃げるんですか?恐いんでしょう自分の助手に上を行かれるのが…??」
三枝。この若造は野心家だ。
汁木博士に師事を賜りながらも常にその技を奪おうと虎視眈々。
彼の溢れんばかりの研究の熱心さはその上昇思考に起因する。
それはある種の危険も孕んでいたが、汁木博士は三枝に対して我が子可愛さにも似た頼もしさを感じていた。
「逃げるんですかい博士、え。この、」
「何で一々対抗したがるの君?」
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