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(…さて。この身体もどこまで持つものか…)
壊れかけの身体。シロは自らをそう分析している。
今日明日にどうにかなるほど切羽詰ってはいないが、恐らくヒトの平均寿命までは生きられないだろうと推測する。
だからこそ、彼は生き急いでいた。絶望を乗り越えた希望を目の当たりにして、この世界へと向き合った自分自身の心が擦り切れてしまうその前に、自らの生きる証を見つけるために。
シロは、瞳を開いた。
僅かな話し声が聞こえる方向に視線を向けると、旅の同行者であるマシロと、シロの愛機である白い死神が向き合い、会話をしているようだった。
シュールな光景だが、当人たちにしてみればさして大したことない、日常の延長線に過ぎないのだろう。
白い死神は、シロと同じ境遇で生み出された機兵である。正式な登録名はあるのだが、この惑星へと流れ着いた後に改修し、自らと共に本来の名を捨てていた。
その自立制御を行っているのは学習型の超AIであるが、現在はほとんど中身のない状態であった。或いはこれから時間を掛けていけば、普通に会話する能力を得るかもしれない。
何にせよ、二人はこの惑星に辿り着いた瞬間から、新しい人生を始めたことに間違いなかった。
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