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「シロ、どうしたの?」
そこへ、マシロが駆け寄ってきた。そちらへ視線を向けたシロだが、彼女が手にした物を見て思わず絶句する。
その手には、程よく食材が煮込まれた鍋があった。
「…………わざわざ持ってくる必要はないと思うが」
何とか言葉を見つけ出して告げるシロに、
「だって、放って置いたら焦げちゃうでしょ?」
正論で返すマシロ。シロは返す言葉も無い。
「あれ、その人…誰?」
小首を傾げるマシロに、視線を横たわる少女に戻しながらシロが答えた。
「行き倒れらしい」
確かにそれ以上に適した回答はないだろう。珍しい容姿ではあることを除けば、それ以上でも以下でもない。
そこが一番の問題のような気がしないでもないが、当人が気絶している以上はなんとも言えない。
「そうなんだ。シロ、どうしよう。このままだと風邪引いちゃうよ?」
マシロの言葉に、シロは軽くため息を吐いた。
「…お前にそう言われては、放って置くわけにもいかんな…」
かつて、自分が行き倒れた際に、マシロに助けられたことを思い出しているのだろう。
シロは横たわる少女の脇に膝を付くと、その頬を軽く叩いた。
「おい、大丈夫か? こんな所で横になるのは身体にも悪影響を与えるぞ」
それでは完全に酔っ払いの介抱だが、それを指摘する者はこの場にいない。
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