白い英雄

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「…私がその名を知っていることが、お前にとって不都合なことなのか?」  疑問を解消するために直球で投げ掛ける質問に対して、少女はその身をゆっくりと起こすと、涙を浮かべたままの瞳でシロに向き直り、答える前に質問をした。 「その前に、貴方の知る神条正人という人は、その…勇者機兵隊の隊長、で間違いないでしょうか?」 「ああ」  迷いなく肯定するシロに、カナメは眉を寄せて考え込む仕草をした。 「私はまだ、この世界から出られていない…? 界渡りの紋章の欠片は確かに、正人さんに渡した筈なのに…?」 「この世界? 界渡りの紋章? お前は何の話をしている?」  シロの問いかけにも、カナメは答えない。というよりは、答えられるだけの精神的な余裕がない、というのが正しい。  が、だからと言って何も分からない状態で放置ては、動くに動けない。  その時、カナメの視線がシロの手に向けられる。正確には、先程拾ったネックレスの破片に、であるが。 「そ、その欠片は…まさか!?」  ただでさえ余裕のなかった表情が、見る見るうちに青ざめていく。  その様子に、シロは手にした欠片に視線を落とした。
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