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(この欠片がどうしたと言うのだ…?)
その欠片がこの場にあることが、どれほどの不都合であるというのか。
それを問いただす前に、カナメは今にも倒れそうなほどに錯乱していた。
「そんな、これがここにあるなら、正人さんは…!!」
その表情は、まさに絶望の色と呼ぶに相応しいものだった。
ならばこそ、シロが反応しないわけにはいかなかったのである。
「これがこの場にあることが、神条正人に不利益をもたらすという事なのか?」
シロの言葉に、カナメは答える様子を見せない。或いは錯乱のあまりに聞こえていないのかもしれない。
強引にその肩を掴むと、強制的に彼女の意識を自分に向けさせる。
「答えろ! この欠片がこの場にあることは拙いのだろう!?」
その一喝に我を取り戻したのだろう。若干落ち着いた様子でシロを見ると、震える唇で言葉を紡いだ。
「…はい。これは私が正人さんに届けるはずだったアイテム…界渡りの紋章の欠片です。
私はヒリュウ族のカナメ。こことは違う異世界から、彼の力を借りるためにこの世界へやってきました」
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