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こことは違う世界、という単語が引っ掛かるが、その追求を後回しにして、無言で先を促すシロ。
「界渡りの紋章とは、本来であれば使用者を異世界へと導き、最終的にわたしの世界…時空の狭間と呼ばれる場所へと通じる道を開くものでした。手違いで砕けはしましたが、その本来の力は失われていない。そう思っていたのですが…」
「具体的に説明してもらおうか。この紋章の欠片がこの場にあることで、どのような弊害が起きるというのだ?」
言葉を切るカナメに対して、シロは単刀直入に尋ねる。
しばらく思い悩んでいたカナメは、意を決して口を開いた。
「…全ての欠片が、次の世界への道を開きます。けれど、最低限欠片が全て揃った状態でなければ、次の世界への出口が開かれることはない。
正人さんは今…この世界とも異世界とも違う、袋小路の空間に閉じ込められてしまっている…ということです」
協力を仰いだはずの相手が、結果として正人の、そしてカナメのいずれの世界にも繋がらない場所に閉じ込められてしまった。その事実が、カナメの心に重く圧し掛かっているのだろう。
シロは欠片に視線を落とし、しばし考え込む。
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