第2話 鮮烈なるデビュー戦

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 府中競馬場のスタンド席。  この席は人一人が座れるくらいの椅子が、列をなして、作られてている。  イメージ的には野球場の観覧席の背もたれが無い感じの席である。  その席には冬の寒空の下、相当数の人々が腰を降ろして観戦している。  競馬人気が低迷している昨今、話題づくりは必要不可欠なのであろう。  ホワイトノースと大友真紀みたさに、集まった客もいる。  こういう者たちは、馬券にたいする執着心というのがあまりない。  自分のお気に入りの騎手や馬を応援したりするだけで満足したりする。  馬券を購入しても大金はかけず、小額であったり、または、まったく馬券は購入しないという者もいる。  芝生席に新聞紙を敷きふたりの男が座っている。 「なぁ勝行」 「なんだ」 「ノース、正直どう思うよ」 「走ってみなわからん」 「そうだよな…」  と、飯塚純一はうなだれた。 「話題先行な感は否めないが、まっ仕方ないな、今の競馬人気の衰退を考えれば」  と、小林勝行は言った。  飯塚と小林は競馬仲間で、ふたりでちょくちょくと競馬場に足を運び観戦をしている。  ゲートの中に次々と馬たちが納まっていく。
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