第2話 鮮烈なるデビュー戦

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 一方、病院の室内。  ベッドの上には直正が寝ながらテレビをみている。 「アローの仔は8番人気か」  直正は物寂しげに言った。 「ええ。ですけどアローの仔は絶対に勝ちますよアナタ」 「そうかそうだよな」 「ええそうですとも。なんていってもうちらの娘だったアローの仔ですもの」  ──レースがはじまる。  ゲートが開くと同時に、ホワイトノースが勢いよく飛び出してハナに立つ。  テンから気持ちよさそうに飛ばしている。  まさに快走。  だが真紀にはひとつばかし気になることがあった。  それはノースに、ささる癖があるということである。  真紀は百合に「自分の好きなようにのりなさい」と指示をうけていた。  内埒沿い(うちらちぞい)を快走する。  距離ロスなく走るには、内をとるのは絶対条件。  鮮やかに逃げをうち、後続の馬たちを引き離す。  大けや木の向こう側に白い馬体が消えていく。  坂道は下りに差し掛かり、スピードに乗ってくる。  後続の馬たちも次々に、ノースとの差を縮めて、ノースを捕らえようとしている。  ノースが先頭で直線に入ってくると、スタンドからはどよめきが起きた。  飯塚と小林は思わず立ち上がった。 「ノース来たな小林!」  「あぁ。俺、単勝買ってんだよな1万円ほど」  全8頭の馬たちが、直線に入ってくる。  そして直線の攻防である。
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