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一方、病院の室内。
ベッドの上には直正が寝ながらテレビをみている。
「アローの仔は8番人気か」
直正は物寂しげに言った。
「ええ。ですけどアローの仔は絶対に勝ちますよアナタ」
「そうかそうだよな」
「ええそうですとも。なんていってもうちらの娘だったアローの仔ですもの」
──レースがはじまる。
ゲートが開くと同時に、ホワイトノースが勢いよく飛び出してハナに立つ。
テンから気持ちよさそうに飛ばしている。
まさに快走。
だが真紀にはひとつばかし気になることがあった。
それはノースに、ささる癖があるということである。
真紀は百合に「自分の好きなようにのりなさい」と指示をうけていた。
内埒沿い(うちらちぞい)を快走する。
距離ロスなく走るには、内をとるのは絶対条件。
鮮やかに逃げをうち、後続の馬たちを引き離す。
大けや木の向こう側に白い馬体が消えていく。
坂道は下りに差し掛かり、スピードに乗ってくる。
後続の馬たちも次々に、ノースとの差を縮めて、ノースを捕らえようとしている。
ノースが先頭で直線に入ってくると、スタンドからはどよめきが起きた。
飯塚と小林は思わず立ち上がった。
「ノース来たな小林!」
「あぁ。俺、単勝買ってんだよな1万円ほど」
全8頭の馬たちが、直線に入ってくる。
そして直線の攻防である。
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