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競馬には直線のドラマがある。
近年の府中の馬場は高速馬場といわれ、上がり勝負の競馬になりやすく、瞬発力勝負になりやすい。
そんな馬場でノースが鮮やかに逃げをうつ。
長い坂を上りきり、ノースは更に加速していく。
するとあっというまに、後続の馬たちを引き離していく。
1馬身、2馬身、3馬身……。
ぐんぐんと突き放していく。
馬主の日比野百合は、勝利を確信したのか、安堵の表情を覗かせていた。
ノースは馬なりで、あれよあれよというまに、7馬身差をつけて逃げ切った。
「姉さん勝ったね」
「当たり前じゃない。うちの仔が負けるわけないでしょ」
と、百合が言うと、雅則は軽く微笑んだ。
真紀はノースの頭を撫でている。
「お疲れ、ノース」
真紀はノースに声をかけた。
ノースは舌を出しながら向こう上面まで走り、地下場道に消えていく。
──真紀は後検量に向かう。
ウィナーズサークルでは、お立ち台が3台設置される。
中央の台の上には馬主の百合が立ち、向かって右側に調教師の加納、そして左側には生産者の宮野直憲が立っている。
一方、病床では直正と蔵乃が競馬中継をみている。
「やりましたねアナタ。アローの仔が」
蔵乃が直正の右手を握りながら言った」
「あの大友勝弘の娘さんは、ノースと相性がぴったりだ」
「そのようですね。あの子でよかったですよね」
直正はうっすらと涙を浮かべている。
そして眠りに着いた。
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