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抗がん剤の影響で、やせ細り骨と皮だけになっていた。
顔は骸骨のようになっていた。
目元はくぼみ白い顎(あご)ヒゲが目立つ。
そんな源之助を孫娘の百合と百合の母親の昌代が、そばに付き添う。
「百合(ゆり)…」
源之助は笑顔で百合の名を呼ぶ。
「なに…おじいちゃん」
「ノースのことは…頼んだぞ…」
「うん。わかったよ…」
源之助の声はもう生気を感じられない。
声すらかすれるくらい、衰弱していた。
百合は源之助の右腕を両手で強く握りしめている。
「そこの黒い椅子の上に茶封筒があるじゃろ…」
百合はベッドの足元にある黒い丸い椅子の方をみる。
そして椅子の上にある茶封筒をみつめている。
「ワシが死んだら…それの中身をみてみんしゃい…」
「おじいちゃん…」
「ノースのな騎手には大友真紀を起用せい。ノースと会話が出来るのは、大友だけじゃ…」
「うん。そうするよ。だからおじいちゃんはもうしゃべらないで…」
源之助は天井を無言で見つめている。
「なんだか…ねむくなって来たな…」
源之助はそういうと目を閉じた。
源之助の異変に気づいた百合は、源之助の体をゆすりながら
、「おじいちゃん!おじいちゃん!」と何度も大声で呼びかける。
だが返事が無い、百合はその場で泣き崩れる。
「おじいちゃん。ううぅぅぅ」
昌代は泣きじゃくる百合の体を背後からそっと、両肩を抱く。そして百合は昌代の方を振り返り、昌代の腕の中で号泣する。
看護師が医師を呼ぶ。
しばらくして医師が駆けつけてくる。
医師は冷静に、ただただ事務的に手際よく仕事をする。
パジャマの上を剥ぎ、聴診器を胸に当てる。
左腕の腕時計を見つめる。
「午後1時50分、死亡を確認いたしました」
百合と昌代は「ありがとうございました」
と、医師と看護師に一礼をする
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