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「どけ!」
と、雅則を乱暴にどかし百合の胸倉を左手で掴む。
「おい早くよこせ!」
「いやよ。お父さんはいっつもそうよね。こうやって最後には暴力を振るってまで、自分の力を誇示しようとする。それも弱い相手ばかりに対してね」
「娘の分際で口答えすんな!」
源次郎は百合の顔面を思いっきりひっぱたく。
「いたい!暴力ふるったって、ぜったいに利権書は譲らない!なぜおじいちゃんがおとうさんに利権書渡さなかったのか理解してる?」
「うるせぇー生意気なこというな!」
源次郎は再びひっぱたく。
「いたい!」百合は泣きじゃくる。
「そうやって、相手のことを潰してばっかりいるからお父さんには親友のひとりいないのよ! お父さんの生き様は、カッコ悪いわよね。相手を潰すことしか考えていない! だからお爺ちゃんはお父さんに譲らなかったのよ。大切なノースの利権書を!」
「……」
「おまけになによ、お爺ちゃんが病気で苦しんでいるのに、一度もお見舞いに来なかったわよね! 愛人つれてハワイですって? ずいぶんなご身分ですわね。源次郎大王様!」
「……」
「お父さんじゃノースを潰すだけ。馬はね賢いの。賢いから人を選ぶの、人をみるの。ノースはね、頭のいい素直でやさしい性格をしたイイ仔なのよ! お父さんとは違ってね!」
源次郎は左手を勢いよく離す。
百合は蛮声で続けざまに源次郎に言う。
「ノースはけっして、私だけのものではないの。あの仔は地方の期待の星なの? お父さんにはわからないでしょうけれどね。そういう人の心というものが! この人でなし!心無き独裁者」
源次郎は百合を睨みつける。
そして「けっ!」とふてくされながらドアのほうに向かう。
ドアを勢いよくあけ、バドン!と思いっきりドアを閉めて、部屋を後にする。
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