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二、三人の藩士が、こちらに向かって刃を向けて斬りかかってきた。
「きゃぁ!!」
とっさに恐怖で目を瞑ると、バシュッという嫌な音がした。
のろのろと顔を上げれば、一面に浅葱色を見た…。
「まったく、どうしてこうなるのかな」
「こんな人数で来ても、俺らに敵うわけねーのになっ!」
刃についた血を払い落し、しっかりと刀に収めると、
先ほどの冷めた瞳が私を射抜く。
「君にはまだ離してもらうことがありそうだから、ここでは殺さないよ」
何かしようとすれば、容赦なく斬る。
無言でそう言われているようだった。
「・・・はい」
それは、当然だと思う。
知らない人に突然飛びつかれて、しかも今の自分の恰好はこの時代風景にしてはおかしいことは重々承知している。
それに、無理してまで逃げ出そうとは私には思えなかったのだ。
――…彼の面影が、沖田先輩と重なるから……。
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