~始~

2/3
前へ
/56ページ
次へ
朝日がまぶしい初夏だった。 「早くしないと遅れるよ?」 「わかってます!!」 慌ただしく玄関を飛び出す。 一息つく間もなく、浴びせられる冷たい言葉。 「はい、3秒アウト」 「そ、それくらいいいじゃないですか!」 私を一瞥して、目の前の彼はため息をついた。 「おはよう、みずきちゃん」 微笑みながらそっと手を貸してくれる。 「あ、ありがとうございます…」 大好きな、憧れの先輩。 大切な恋人…。 「そういえば、今日はみずきちゃん部活ないんだっけ」 「あ、はい」 「じゃあ校門前で待ってる」 ふっと笑う彼。 「・・・ありがとうございます、沖田先輩」 火照る顔を見せまいと、俯いた。 そんな私を見て、目を細める先輩。 幸せだった。……この時までは。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加