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一ノ章
***
瞼を上げれば、空があった。
雲ひとつない、澄んだ空。
「・・・どうしたの、私」
誰かが叫んで、それで‥。
ゆっくりと上半身を起こせば、ずきんと頭に激痛が走る。
「い・・っ!」
チカチカと眩む視界の中で、上から声が降ってきた。
「君、そこにしゃがみ込まれても通行の邪魔なんだけど」
「え、あ、す‥すみませ…」
反射的に謝り、ふと気がついた。
――…この声‥。
「ちょっと、謝るのはいいから、さっさと退いてくれる?」
ぴたりと硬直した私を追いたてるように、明らかに憤慨した声がする。
もしかして…―。
ゆっくりと、顔を上げた。
「・・・沖田、先輩?」
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