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顔を上げれば、そこには大好きな先輩の顔があった。
先輩‥先輩…!
生きていた……!!
嬉しくて、私は飛び上がるように沖田先輩に抱きついた。
「先輩!先輩!!」
とめどなく溢れる涙が、頬を伝う。
きつく抱きしめ、子供のように泣きじゃくる。
「ちょっと何、斬られたいの…?」
「おー総司、見せつけてんなよなぁ!」
「やめてくれるかな平助君」
苛立ちを隠せない声で、無造作に私の体を引っぺがす。
「君、僕に何か用でもあるの?」
鋭い眼が、こちらを睨んでいた。
そこでやっと気がついた。
…先輩じゃ、ない。
髪の毛の長さとか、微妙に違う。
それに、服装がおかしい。
よくよくあたりを見渡せば、日本史の教科書に載っていそうな古い街並みが広がっていた。
「・・・ここは‥」
知らない風景、けど、知っている。
一体ここはどこなんだろう…。
「それに君の服装、ここじゃ珍しい恰好してるね。異国の人?」
私の動揺に気付いていないのか、沖田先輩のそっくりさんは腰に刺さっている刀らしき物に手を伸ばしていた。
「・・・え!?」
ちょっと待て、これは一体どういうこと!?
こっちの混乱もお構いなしに話を続ける。
「新選組に仇なす者なら、今ここで君を殺す」
本気の眼だった……。
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