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「…ねぇ、琴音…。何もお風呂や寝るときまでついてこなくても…」
ここは琴音の家‥否、屋敷である。
あの後結局琴音に押し切られ、今日は彼女の家に泊まることになったのだ。
「だめよ、いくらうちが安全だって言っても、美羽ちゃんは狙われてるんだから!誰かがそばについてないと!!」
それに、と琴音は付け足した。
「せっかく美羽ちゃんが泊まりに来てくれたんだもの、一緒にいないともったいないじゃないvV」
「………ι」
琴音の瞳がきらきらと輝いているのを見て、美羽は苦笑した。
美羽のこととなるともう誰も彼女を止められないことは、美羽自身もよく知っている。
だが、このままではトイレにまでついてくると言いかねない。
「美羽ちゃんは嫌なの…?」
…捨てられた子犬のような瞳でみつめられて、「嫌」だと言える人間がいるだろうか。
少なくとも美羽は『No』だった。
それに、あまりにべったりなのは困りものではあるが、そこまで自分を好いていてくれるのは正直嬉しい。
「嫌じゃないけど‥さ//」
「よかった!美羽ちゃん大好きvV」
いつものように抱きつく琴音を苦笑しつつなでていると、美羽を抱きしめる腕に力がこもった。「琴音…?」
不審に思った美羽が顔をのぞき込むと、真剣な表情をした琴音と目があった。
「美羽ちゃんは絶対に私が守るから」
美羽は一瞬、驚きを隠せなかった。
いつも柔和な笑顔で微笑んでいる琴音が、こんな表情をすることなんて、滅多にないのだ。
それだけに、彼女がどんなに自分を大切に思ってくれているかが伝わってくる。
暖かい気持ちが、胸の中に流れ込んでくるのを感じた。
「…うん」
思わず笑顔になった美羽に、琴音も嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ、もう遅いし、そろそろ寝ましょう」
琴音に促され、ベッドに寝ころぶと、どちらからともなく指が絡まり、また、笑みがこぼれるのだった。
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