*プロローグ‐光と影‐*

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「久美!ちゃんと勉強してるの?」 ふいに、居間からイライラしているお母さんの声がした。 返答するのが面倒臭くて黙っていると、かわりに巧が口を開いた。 「してるっぽいよ」 「あっそ」 お母さんは適当に返事をした。 最近、洗濯機の調子が悪いから、機嫌も悪いみたい。 って…… 「ちょっと巧!!」 「なんだようるさいな」 「なに勝手に返事してんの!?」 あたしをかばった気でいるのかもしれない。 ムカつく。 ふざけないでよ。 「別にお前のためじゃないよ。とっとと勉強したら?」 しかし、巧の返答はあたしの考えを読んだものだった。 どうして巧には、あたしの考えていることが分かるんだろう? 「あーあ…」 また、つぶやいていた。 もういやだ。 つかれた――。
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