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「ルシファー、もっと低く飛んでくれよ!
寒くて凍える!」
もう数時間は飛んでいるだろうか。
漆黒の翼を羽ばたかせ夜空を駆ける少年は、内なるもう一人の存在に声をかけた。
すると、しだいに高度が下がり、雲を抜けて眼下に果てしない海が見えはじめる。
『今の人間は敏感なのだな。
私の時代はそのようなことを言う者はいなかったぞ。
まぁ、貴様に魔族や勇者の資質を求めるのは野暮というものか……』
内なる声が少々呆(アキ)れぎみで少年に話しかけた。
『だが、わかっているな?
我々はあの島に行けば、命を狙われる身だ。』
内なる声が少年をさとす。
「わかっているよ。
でも行かなくちゃ!
あの狂ったゲームを終わらせなきゃいけないんだ!」
少年の瞳に揺るぎはない。
『……そうだな。』
ルシファーと少年。
彼らが物語を終局に導くことをまだ誰も知らない――
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