本日は死亡なり。

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扉が少し開かれると 眩しいくらいの光が隙間から彼を照らし出し、 何かに引っ張られるように彼は扉の中に引き込まれ、、、 《バンッ》 という大きな音で扉は 閉じられた。 その瞬間、 彼の中に生前の記憶が 流れ込んできた。 生まれてから死ぬまでのそれがまるで 映画のように頭の中に流れ込んできた。 『………死んだのか。』 一言で言う彼に、 未練のような物は見られない。 死を受け入れているのだ。 たいして、面白くもない人生だったな~と 思いながら、眩しさに閉じていた目をあげると そこには豪奢な椅子に座った老人と 性別が一見では解らないような、 羽をはやした人が数人でこちらをみていた。 そして… 一呼吸あったのちに 周りに、 くじをひいて当たりがでたときのような 鐘の音とファンファーレのような音楽が流れ 『おめでとう……………………………………………人目の死者よ。 』 と、老人は口を開いていった。 老人が言った人数は途方もない数字だった 死んだのに、 何がめでたいんだ。 彼は、笑顔のまま 前を見据えそう考えた。 『めでたいぞ? ソナタには、 儂からは、 記憶をもったまま転生できる権利を与えるしのう。』 老人はいい 周りに居る天使達も 要は何やらをつけるから、転生しろと言っているようだった。 『………いや、別に記憶とか、才能なんて要らないし、 転生とかしないで天国があるかは解らんがそっちで、いいの、、ですが。。』 後半を敬語に変えたのは目の前の老人が目を細め軽く睨ん…… いや、威厳ある眼差しを向けてきたからだった。営業マンは、 死んでも笑顔を作る事と、相手が望むであろう最小限の譲歩を頭で考える戒だった。 『……ほう、 主は儂達の贈り物がいらんのか。』 くれるというなら貰いたい、 だが、ただ程怖いものがないのを知っているのも営業マンなのだ。 それに、天寿を全うしたかは解らないが寿命があって死んだのだから、 無理に転生しなくちゃいけないわけではない。 『いえ、やっぱり、戴けません。 転生するということは赤ちゃんからですよね? 記憶とか下手にあったら生まれ落ちたその時に 死にたくなるような恥辱が後に待ち構えてるじゃないですか』 戒は、赤ちゃんプレイなどごめんだ、とばかりに言い切った。 『ならば、、、 大人ならば構わないのだな?』
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