はじまり

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2011年1月初旬、私の実家の建て替え工事が始まった。 父は職場近くのマンスリーアパートに引っ越した。 母は実の母親である、私の祖母が一人住んでいる家に居候した。 時を同じくして、私の主人は東京の会社に転職した。 主人が転職先で、ある程度落ち着くまでという理由をつけて、私は大阪での仕事を続けている。 家材道具を東京に持って行ったため、それまで住んでいた神戸の家を出て、近くの実家にしばらく居候する… つもりが、実家が解体中のため、母と揃って祖母の家に居候することになった。 祖母は快く受け入れてくれ、この共同生活が幕をあけた。 同居して早々、母が台所から 「きゃ~!!、何これ~、ちょっとおばあちゃんこれ何よー。ヽ(*`Д´)ノ」 私もつい気になって、そっちに向かうと… 冷蔵庫の中に、1ヶ月は賞味期限の切れたハム、いつのものか分からない危険な香りのするタッパーに入った野菜炒め?それからカビちゃんとおぼしきものが生えてしまっている、年末についたお餅… などなど、悪臭を放つゴミ箱のような冷蔵庫。 私は無言で臭いを避けるように後ずさりした瞬間、 おばあちゃんが「何よしよー(おばあちゃん特有の方言、何よの意味)、まだいけるからほっといて、私が食べるんやから。捨てるなんてもったいない。あんたの冷蔵庫とちゃうで。私のもんやからほっといて。」 私は内心、昔からの伝説を思い返していた。 黒カビの生えたバター、上の黒カビだけ削って青カビの部分をちぎった食パンに塗って食べたという伝説。 明らかに酸っぱい臭いのする味噌汁を、火にかけたらいけるって言って飲みきった伝説。 菌に恐れをなさない昭和一桁の強いばあちゃんだと思ってたけど、 けど、冷蔵庫の中ちょっとやばすぎる。 おばあちゃんが上の階にいった時に、冷蔵庫の中をそっと開けてみた。
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