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「あ゛ーーーーーーーーーっ」
客の来ない花屋『華子』のカウンターに
太朗はどさっと勢いよく倒れこんだ。
そのあまりの勢いに、涼子は
カウンターの方が壊れないかと心配になり
駆け寄った。
「もう!何してるんですか店長!!
お店壊す気ですか!」
カウンターが辛うじて無事だったのを確認すると
さっさと持ち場に戻り、ぷりぷり怒っているので
太朗は嫌な物でも見るかのような目で
突っ伏した頭を少し上げてじとーっと彼女を見た。
「澤口は、俺の精神状態の変化よりも
店の方が大事なんだね」
「そんなの当り前です。」
涼子はせっせと花の世話をしている。
「俺今回、結構頑張ったのに酷い...」
少し涙声で言ってみる。
「当然の事象です!」
太朗の言葉は涼子にきっぱりと返されてしまった。
「というか、店長は由乃ちゃんの前の学校の転校手続きと
山科小学校への転入手続きしただけじゃないですか!」
「それも私が調べて教えたことですよ」
ふーっと涼子が一つため息をついた。
「むしろ私の方がそのカウンターに受け止めてもらいたいくらいですよ」
転校・転入手続きをするにあたって
由乃は太朗の元に預けられてから登校していなかった。
もちろん学校側は彼女が登校してこないので心配した。
家族に連絡を入れた所、家族とは連絡がつかなくなっていて
そろそろ警察に連絡をした方がいいのではないか
という所まで話が進んでいたのである。
だから、太朗がいくら弁明しても教師たちは
彼の言葉を信じることはできなかった。
とうとう児童相談所に相談するという話まで出てきたので
太朗は慌てて涼子を召喚したのである。
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