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「よしのだぁーっ!!!!」
そう言って勢いよく駆けていく女の子の背中には
薄手のシャツにエプロンを引っ掛けて
髪の毛があっちこっちはねた男が突っ立っていた。
つまらないのか、眠いのか
さっきからあくびばかりしている。
辺りは一面ピンク色で
桜の花が舞う木の下では大勢の花見客が
酒と桜を楽しんでいた。
「由乃、昼ごはん食べて早く帰ろうよー」
ぼさぼさ頭の男は由乃に向かって少し声を張り上げた。
「ヤダ!!今来たばっかりじゃん!!
太朗君も一緒にヨシノ見ようよ!」
そういって由乃は早速帰りたそうな顔をしている太朗に
ぶんぶんと大きく手招きした。
太朗は少しごねたが
やがて、はいはいと半ば諦めたように由乃の元へ行く。
その横にはできるバイト・澤口涼子がいた。
彼女もまた、花見についてきたのである。
季節は春真っ盛り。
由乃の転校手続きも終わった。
しかし、時期が時期なので
彼女は新学期から学校へ登校することになっていた。
その間に一度みんなで出かけようと
涼子が殆ど嫌がる太朗を
強引に花見に誘わせたのだ。
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