花見(後編)

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「よしのだぁーっ!!!!」 そう言って勢いよく駆けていく女の子の背中には 薄手のシャツにエプロンを引っ掛けて 髪の毛があっちこっちはねた男が突っ立っていた。 つまらないのか、眠いのか さっきからあくびばかりしている。 辺りは一面ピンク色で 桜の花が舞う木の下では大勢の花見客が 酒と桜を楽しんでいた。 「由乃、昼ごはん食べて早く帰ろうよー」 ぼさぼさ頭の男は由乃に向かって少し声を張り上げた。 「ヤダ!!今来たばっかりじゃん!! 太朗君も一緒にヨシノ見ようよ!」 そういって由乃は早速帰りたそうな顔をしている太朗に ぶんぶんと大きく手招きした。 太朗は少しごねたが やがて、はいはいと半ば諦めたように由乃の元へ行く。 その横にはできるバイト・澤口涼子がいた。 彼女もまた、花見についてきたのである。 季節は春真っ盛り。 由乃の転校手続きも終わった。 しかし、時期が時期なので 彼女は新学期から学校へ登校することになっていた。 その間に一度みんなで出かけようと 涼子が殆ど嫌がる太朗を 強引に花見に誘わせたのだ。
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