2人が本棚に入れています
本棚に追加
三人で仲良くごちそうさまをして
歩いて『華子』へ戻る。
花見に行くときも帰る時も
由乃は終始楽しそうで
桜の木を見つけては
元気に走り回っていた。
それに涼子も加わって
太朗はずっと荷物持ちになっていることに
文句を言い続けていた。
相変わらず、『華子』へ戻った太朗は
早速自分の定位置について
ボーっとし始めた。
由乃は走り回って疲れたのか
奥の休憩室で
うとうととしている。
涼子は太朗に動いてくださいと言いながら
花たちのお世話をしていた。
「店長、少しは動いてくださいよ」
涼子がなかなか動こうとしない太朗に
詰め寄ってきた。
働く手は止まることがないのが
彼女のすごい所である。
しかし、太朗は涼子の話を聞いている様子もなく
じっと何かを考えているようだった。
「店長、もしかして本当に具合が悪いんですか?」
何か彼に悪いことでもしたかのように
恐る恐る涼子が尋ねてみる。
しかし太朗は
別に何ともないというように
首を横に振った。
「もしかして、私がずっと荷物持ちさせていたことに怒っているんですか?」
「そ...そんなに俺の心は狭く見えるのか?」
「見えますね。むしろ心があったんですかってレベルですね。」
「」
太朗は少しイラつきながらも、まあいいやと言う様子で
笑った。
そしてゆっくり、思い出すように言った。
「世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」
最初のコメントを投稿しよう!