序.悪始動

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「や、やめろ!!来るな!!」 研究員は腹の痛みを完全に恐怖で忘れ、震える足で後退りする。 あのカプセルの中の少女がどれぐらい危険なのかは研究員が一番知っている。 近付けば、真っ先にあの世行きだ。 研究員は白衣のポケットに手を突っ込んで、何かを取り出した。 少女は研究員の行動に首を傾げた。 手に持つ電子板とは逆の手に、拳銃をポケットから取り出して握ると少女に銃口を向ける。 「……」 少女は首を傾げた状態で手を顔ぐらいの高さに上げる。 研究員は拳銃を構えたまま、少女から狙いを外さずに震える指で引き金に触れる。 少女はそれを見て、簡単な行動を取った。 指を弾いた。 それだけだ。 たったそれだけで。 十メートル以上離れていた間を埋められた。 「……!!」 「……」 研究員は驚きで舌を噛みそうになったが、それより拳銃を目と鼻の先にいる少女に向けた。
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