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二人以外の生徒たちの視点でいうと、ぽっと出の普通の女の子が学園一有名な生徒とほぼ互角で勝負しているという信じがたい光景が今目の前で繰り広げられているのである。
「……ざわざわしてると思ったら、いつの間に……」
「まあ学年――――いや、学園一の俺とぽっと出の1年が互角に戦ってりゃ、そりゃ気にもなるわな」
ジョウがふ、と笑ってゆっくりと剣をおろし、鞘におさめた。
「学園一って、3年生のトップの人は?」
「あ~、ニケなあ……あいつ今はいないんだよ、討伐行ってて」
「……はあ」
女神様直々に討伐とは、なんとも神話のような話である。
そろそろ時間だろ、というジョウの一言で渚は慌てて教室へと向かおうとした。
しかし翻しかけた身を再びジョウの方へと戻し、ジョウを見据える。
「ジョウさん」
「なんだ?」
「次は本気でお願いします」
ざわっ、とまた生徒たちが沸き立つ。
「いやいや、ワリと本気だったぞ?」
と言うわりには、大分と余裕な表情であった。
「……眼に、殺気がありませんでした」
ん~、とジョウは返す言葉に困り、とりあえず無いのかあるのかわからない脳みそをフル回転させて言葉を捻り出す。
「そりゃ女の子傷つけたら株はガタ落ちするし、それにあれだ、これはお手合わせだからな」
それに、とジョウは続ける。
「第一お前も本気じゃなかっただろ?」
う~ん、わかりません、と言葉を濁しながら渚は苦笑いを浮かべた。
そしてさっとお礼をすると、そのままたたた、と廊下を走っていった。
(しかしなんだったんだ……あの時のあいつは)
彼の脳裏には、青い瞳の彼女が、浮かんでいた。
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