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「さあ、つきましたよ」
いつの間にか私たちは地下の書庫の扉の前まで来ていた。
ふるふると頭を振り、モヤモヤした感情を振り払う。
「う~ん、やっぱりいますね」
少し先生がしょんぼりした声でそう言った。
何かと思い、覗き込むと
扉の前に小さな生き物がいた。
生き物…というよりゴブリンである。
小さな角に大きな眼、手には槍を持っていた。
「なんでぇ、門番がいちゃダメなのかぇ?」
しかもなんか訛ってる。
「そういうわけではありませんよ」
先生はにこやかに笑い、華麗にスルーした。
ゴブリンがふん、と鼻を鳴らし立ち上がる。立ち上がっても私達よりかなり低い身長だから、相変わらず見下ろすカタチになってしまうんだけど。
「今日の代金は……水」
「水?」
「彼はね、扉に通すかわりに代金を請求してくるんです。代金といっても大体は彼が今欲しい物なんですけどね」
それにしても水かぁ……と先生が腕を組み、う~んと悩む
その時、後方から声がした
「私、水出せます」
「ああ!ロナさんは確か水の魔法使いでしたね、ではよろしくお願いします」
先生がにこりと笑った。
ロナさんが前に出てしゃがみ、ゴブリンを見据える
「あ~冷たい水が、ええのぅ」
ロナさんが指をくいっ、と下げると、瞬く間にその場で、水の入った氷の器が生成された。
それをゴブリンに渡す。
ゴブリンはそれを受け取り、ぐいっと一気に飲んだ。
「いかがでしょうか?」
ロナさんがそう尋ねた。
ゴブリンは無言で頷き、扉の隅の方へ歩き、座る。
すると扉が鈍い音とともに、開かれた。
「さあ、行きましょう」
私たちは、扉の中へと進んだ。
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