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あの瞳は――――
「黙れ!今ここで貴様を蹂躙してやる……!」
「まあそうカッカすんなよ~セト~」
ジョウがセトと呼んだ彼は、ジョウを睨みつけていた。
あの人、確か墓地であった人だ。だけど今は別人のような顔つき…。
「俺はともかく、なんの関係もないコイツを巻き込みかけたのは少し許せない、かな…」
少し怒りの篭った声色だった。
「……」
息が詰まりそうな程張り詰めた空気が漂っている。
爆発寸前まで騒がしかったギャラリーも静まり返っていた。
「――――姉の仇!」
抉った地面をさらに抉り、猛スピードで武器を構えながらセトが走り出す。
そして勢い任せでジョウを斬りつけた。
「!」
私は反射的に目を瞑ってしまった。
暗闇の中に、余裕たっぷりの声が響き渡る。
「だから勢い任せはダメだっつったろ?はいやり直し!」
ガキン、という金属音とともに舌打ちが聞こえた。
目を開けるといつの間にかセトが元の場所に戻っていた。
「恨むならパンドラを恨めよ、俺を恨んだところで「姉を殺したのは、他でもない貴様だろう!何故パンドラに罪を擦り付ける!?」
「……なんか毎回こんな会話してるよな、俺達って」
ジョウがふと笑い、剣を地面に突き刺す。
片手であんな速い斬撃を防ぐなんて……
やっぱり最強の名は嘘ではないようだ。
「お前さあ、いい加減どうにかしないと本気で“やばいぞ”」
「……貴様を殺して私も堕ちる、それの何が悪い」
「本気で言ってんのか?ねーちゃんが泣くぞ?」
ぎり、とセトが歯を噛み締めた。
「……私には、もう……!」
そう言い終わるや否や、セトはその場から消え去っていた。
「今回もなんとか乗り切れた……」
ふい~、とジョウが安堵のため息を吐いて、私をおろす。
「悪い悪い、タイミングがなかなかなくてな」
「いえっ、その……助かりました、ありがとうございます」
あの時助けられていなかったら今頃私は……ゾッとしてしまう。
ジョウは私の頭をぽんぽんと叩きながら笑っていた。
広場から張り詰めた空気が抜けていくと同時に、広場にはチャイムが鳴り響いた。
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