蛇の指輪

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 夏の日差しは強い。  寝転んだまま真っ白なそれに向けて手を伸ばすと、指の隙間から光が漏れた。  真昼の学校の屋上。  等間隔に並んだ焼けたタイルとよく似た生徒達の頭が遥か下の校庭でだるそうに揺れている。本来授業をうけているはずのこの時間は、のんびりと会話するにも、昼寝するにも向いていた。 「あー、クロおー」  間延びした声が晴れきった空に吸い込まれる。どこまでも濃くて厚い、青。 「うっせえな、クロって呼ぶな」  日陰で壁にもたれているクロが返す。陰の中にいても綺麗な短い黒髪が揺れる。自分の長くて褪せた髪に触ってみる。色を抜かれ焼かれた髪はごわつきながら手にまとわりついた。
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