蛇の指輪

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 クロ、鉄(くろがね)。授業がめんどくさくなってきた入学したての春に、一眠りしようと屋上に来たとき、その屋上でのんびりと眠っていた。クロ。上靴の色を見る限りでは先輩らしかったが、どうでもよかったので気にしなかった。起きたとき、覗き込んでいた黒い目が綺麗だったのでクロ、と言ったらクロって呼ぶな、と返されたのでそのままあだ名になった。昔呼ばれた名前だと言っていた。クロ。  クロは、自分の欲しかった全部を持っていた。黒い髪、黒い目、端正な顔、程よく筋肉のついた体、高い身長、包容力、強さ、年齢。全部がうらやましかった。そして強く憧れた。  それ以来、授業時間に屋上に行くと、いつもクロはいた。昼寝をしていたり弁当を食べていたり、本を読んでいたり。時にはぼーっとしているだけの時もあったが、クロは必ずいた。隣に座ったり一緒に寝たり、少し離れたところで全く違うことをしていたり。だいたいの時間をクロと共有していた。
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