蛇の指輪

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「なあ、明日は日食らしいぞ」  ぼんやりとクロが話しかけてくる。半分独り言で、半分会話。それに反応してもしなくても構わない。思いついたから言っただけで、どちらでもいいのだ。 「日食、かあ」  半分独り言のように返す。反応が返ってきても来なくても、どちらでもいい。 「日食ってさあ、蛇が太陽を食べちゃうから起こるらしいね」  昔どこかで読んだ神話に、そう載っていた。クロのワイシャツがずり、と壁と擦れた音を出す。何をしようとあまり関係の無い事なので気にしない。 「どうして食べたんだろうな」  静かな声が返ってくる。クロは例えるなら狼のようだ。しっとりとした真っ黒な毛並みを持った狼。月並みだなあ。もっと似合った表現があるのかも知れないけれど、教養の無い自分にはこれくらいしか表せない。 「わかんね。クロはどう思う?」 「俺は」  その時、初めてクロの声の震えるのを聞いた気がする。いつも同じトーンで話していたクロの初めての、上擦り。 「蛇は太陽に憧れたんだ。好きだったんだ、と思う」  早口でそれだけ言って、またずりりと音がした。頭だけ動かしてクロの方を見る。随分低い位置で肩を頭だけを壁にもたれさせていた。
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