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そんなことを、いつもピアノを弾く度、思い出してしまう…
癒されるために弾くピアノだけど、時々こうして過去にもまだ惑わされる自分がいる。
でも、さすがに12年も経つと、涙がこぼれる回数も減って、思い出に浸る余裕も出てきたかも…と最近は思う。
「あの…すみません!」
突然、響いたその声に驚いて私は思わずピアノから手を離した。
誰?
離れた扉の方へ視線を飛ばす。
「キャッ」
扉の隙間から覗くスーツ姿の男の人に更に驚いて私は声をあげた。
「あ…急にすみません…」
スーツをとても綺麗に着こなす私よりいくつか若そうなその人は扉を開け、中に足を進めながら言った。
「こちらこそ、ごめんなさい。ちょっとびっくりしてしまって…あの…何か?」
私が焦ってその人に聞き返すと、
「あ、園長と今日約束があって伺ったんですが、ここ…違ったね」
と少し笑ってそう言った。
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