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春眠暁を覚えず。
なんてよく言ったもんだ。
春って言うのは始まりの季節。
人によって違いはあるだろうけど、オレの場合は高校生活の始まり。
つまりオレは高校生になるのだ。
今はそんな新☆高校生はまったりしててね!と与えられた春休み。
いやあ……、眠いぜ。
オレは高校の入学式を三日後に控え、春休みの宿題も全て終わらせ、完全にぐだぐだしていた。
この何も気にせず怠惰の限りを尽くせる至福の時はきっと神が与えた最高のプレゼントに違いない。
無神論者だけど。
「ふ、ああ……」
大きく一あくび。
あ、なんか寝過ぎでちょっと頭痛い。
仕方無え、動くか。
「どっこいしょういち」
おっさん臭い掛け声と共にベッドから降りて、ずっと寝ていて凝り固まった体をほぐすためにぐっ、と歩きながら伸びをする。
あ、いい感じにごきごき鳴った。
「ふわあ――あぎゃんっ!」
痛っ!?
またあくびしたらむにゅっとした何かにつまずいた!
こんなとこに物置いたの誰だ! オレか。
『なんで片付けなかったんだい?』
『物くんが……っ、片付けるなって言ったんです……っ、ぐすんっ』
『よし二見アズサくんは無罪。物くんは有罪』
二見アズサ容疑者逆転無罪です!
二見アズサ容疑者を転ばせたブツには死刑判決が下りました!
なんてどっかのツンデレレベルの理不尽な裁判を春の陽気でアホになった頭で繰り広げる。
まあ茶番は置いといて、オレはそのブツを確かめる為に振り向く。
振り向いて、オレをつまずかせた人形か何かにボディスラムの一つでも叩き込む――
「なっ――」
――はずだった。
その時、オレの目に映ったのは。
「ななななっ――」
いや、映って『しまった』のは。
「なんッッッじゃこりゃああああああああああああああ!!!!」
――紫色の、巨大なキノコだった。
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