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「………」
僕は何処かに立っていた。
ここは何処だろう?
閉じていた目をゆっくり開けていった。
目に入ってきたのは、今までに全く見たことがなかった景色だった。
赤い大地が広がっている。
建物という建物らしきものは、全く見当たらない。
そのかわり、地平線の彼方まで見渡せれそうなほどに、荒野の平地が途方もなく広がっている。
「……!?」
後ろを振り向くと、1キロほどだろうか、遠く離れたところに舗装されている道路が一本見えた。
見える限りの左端から右端にかけて、それはまっすぐ延びているようだった。
一応、道路があるってことは、ここは全く現実から掛け離れたような世界ではないのかもしれない。外国かどっかなのかな?
だけど、安心するなんてことはできなかった。
そういえば、今まで僕はなにをしてたんだっけ? 何故こんな所に?
全く思い出せない。
思い出せるのは、僕が日野河 世洋(ひのかわ せひろ)という名前で日本人で高校に通っていて16歳だったことぐらいだ。
急に意識と感覚が現実を取り戻しだして、あまりに今までと違う状況に混乱してきた。
さっきから薄々気付いていたけれど、自分の姿がおかしい。
深緑に近い色の軍服らしき制服を着ているのだ。あと、それに鐔の付いた帽子も被っている。
僕は、一般の公立高校に通う生徒だったはずだけど…。こんな制服は着ていなかった。
だけど、この制服……何故だか、まえに見たことがあるような気がする。
そう思っているうち、大きな変化に気付いた。
口の上に、立派な髭が生えている。まるで昔の軍の指揮官かお偉いさんのようだ。
明らかに現実味のない状況に、ますます疑問は深まる。
……どうする。
遠くにある一本の道路を見つめていた。
とにかく、あの道路伝いに沿って歩いて行けば……。
微かな希望を見いだして、なんとか足を前に踏み出していく。
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