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──どれぐらい歩いただろう?
僕は道路の真ん中を歩いている。
1時間ぐらいは経ったように思える。
こんなとき、時計があればと思った。
一応左の手首には、なにか腕時計のようなものが巻かれている。
けれど、肝心の表示盤の部分には蓋がついていて、それを開けようとしても堅く閉じていて開かなかった。
けっこう歩いてきたけれど、目に入ってくるのは果てしなく広がる赤茶色の大地と、どこまでも続く舗装された道だけだ。
同じ景色がずうっと続いている感覚だ。
そんなだから、自分がちゃんと進んでいるかどうか、実感が無い。
いつの間にか、あの気になっていた変な雲も消えて見当たらなくなっている。
この同じ風景がいつまで続くのかと考えると、だんだん身体が疲れてきた。
そろそろ何か違うものが見えても、いいんじゃないかと思い始めた。とにかく変化のあることを求めていた。
このままじゃ、精神的におかしくなりそうだったからだ。
期待と不安が入り雑じった気持ちで、遠くを見据える。
すると、遠くの方の道脇に微かにだが、小さく確かに四角いものが見える。
思わず
「おぉっ!」
と唸る。
その後なんだか、少しホッとした。
自然と気持ちが嬉しくなり、元気が出てきた。
身体も軽くなったように感じられた。
そうなった僕は気持ちが昂って、その四角いものがある方へ向かって、走り出して行く。
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