見知らぬ場所

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遠くに見える四角い形のものが、その全体の姿をだんだんとクッキリ現し始めた。 それぐらいのときに、僕は息切れをし始める。 そういえば、僕は走っていたんだ。 あまりに無我夢中になりすぎて、走っていたことを忘れていた。 それほど、やっと出てきた新しい変化に、内心喜んでいたのかもしれない。 僕は走るのをやめた。 息切れしだしたというのもあるけど、目指していたその四角いものの正体が何なのかがわかったからだ。 ゆっくり歩きながら、徐々に大きくなっていく、その目標物を見つめていた。 そして、ようやく、それの近く手前までやって来た。 僕はそれを見上げた。 それは…… ……大きな看板だった。 直径1メートルぐらいの太い鉄の柱が地面から、そびえ立っている。 その20メートルうえに、横8メートル縦5メートルぐらいの四角い看板が柱にガッシリ固定されている。 その看板に書かれているものはというと、意味不明なものだった。 全く、文字といえるものが書かれていない。 それは絵の具で塗りたくったような絵に近かった。 まるで抽象画のような絵だ。 誰が何の目的でこんな所に、こんなものを立てているのかサッパリ分からない。考えても理解に苦しむだけだろうから、考えないようにした。 先程から気付いていたのだけど、実はこの看板以外にも まだ他の看板が道脇に沿うようにして沢山あった。 一定の間隔で一つずつ、ずぅっと遠くまで並んで立っている。 どれも似ているようだけれど、一つ一つ微妙に違う絵が描かれている。ホント奇妙だ。
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