※ドS執事×ドM主人

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とある屋敷にてティーパーティが行われていた。 しかしパーティとは言えど、そこには少数の人しかおらず、どちらかと言えばお茶会に近い。 パーティ穏やかで楽しげな雰囲気が流れていたが、 「…マズイ……」 和樹の一言が部屋の中に響くと同時に、バシャッとカップに注がれていた紅茶が慎也の頭にかけられた。 慎也と和樹以外の人々はその光景に驚いた。 幸い紅茶自体は冷たいものだったため、火傷をすることはなかった。 その雫が髪から頬を伝い、スーツを汚す。 (ああ…またスーツが台なしになってしまいましたね……。) 紅茶をかけられた慎也は表情一つ崩さずに隣に立つ。 「貴様はこんなマズイ紅茶をゲストに出して……何を考えている」 冷淡な表情で言葉を発して慎也を見据える和樹。 その瞳には軽蔑するようなものが宿っていた。 先程の空気はどこかに消え去り、水をうったように静まり返っている。 「慎也…何を突っ立っている。ゲストの皆様に謝罪をしろ。」 有無を言わせない声で慎也に命令をする和樹。 「…申し訳ございませんでした……」 慎也は和樹の言葉通り謝罪をした…が、 「何をしている…謝罪は土下座であろう」 頭を下げただけでは和樹は満足できなかったのか、慎也の髪を掴むと地面に引き倒す。 「っ……」 慎也は咄嗟に手をついて受け身を取ったがやはり多少の痛みが走り、顔を歪める。 「さっさと頭を垂らせ」 そんな慎也にお構い無しに命令をくだす。 「……申し訳ございませんでした…」 姿勢を整え直し、再び謝り直して頭を下げる。 これで終わる…ゲストの誰もがそう思っていた… しかし次の瞬間、 ゴッ! 鈍い音が響いた。 誰もが予想をしていない光景が広がっている。 「土下座は額が地面に着かなければ土下座ではない…そんなこともわからないのか貴様は。」 「…………。」 ニヤリと冷徹な笑みを浮かべながら慎也の頭を踏み付ける和樹。 ゴリッと革靴で踏みにじる音が響く。 「…ふんっ……興が冷めた…」 和樹はひとこと言うと会場から去っていった。 その後を追うように慎也も身体を起こして去っていく。 ゲスト達はまるで奇妙なものに取り付かれたかのように呆然とそれを見送った。
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