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私と彼との出会いは、色気もクソもなかった。
この歳になれば、出会いにロマンを求めることも、【付き合う】ということにドキドキを求めることも少なくなるけれど、正直アレはなかったんじゃないかと思う。
なんてったって、私はお風呂上りのスッピンだった。
そして、勢いよくコーヒー牛乳を流し込んでいた。
ぷはぁ、と溜め込んでいた空気を吐き出して、吸って。
「あー」
って。
今みたいに濁音交じりに最初の母音を発音して、天井を仰いだ。
タオルは顔にかけたまま。
視覚が閉ざされて、嗅覚が研ぎ澄まされる。
【本日の入浴剤】のいい香りだ。
あれ。
断っておくと、ここは脱衣所から出た小さなロビーで。
大浴場からはの匂いにしては近い。
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