1、開けて

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私と彼との出会いは、色気もクソもなかった。 この歳になれば、出会いにロマンを求めることも、【付き合う】ということにドキドキを求めることも少なくなるけれど、正直アレはなかったんじゃないかと思う。 なんてったって、私はお風呂上りのスッピンだった。 そして、勢いよくコーヒー牛乳を流し込んでいた。 ぷはぁ、と溜め込んでいた空気を吐き出して、吸って。 「あー」 って。 今みたいに濁音交じりに最初の母音を発音して、天井を仰いだ。 タオルは顔にかけたまま。 視覚が閉ざされて、嗅覚が研ぎ澄まされる。 【本日の入浴剤】のいい香りだ。 あれ。 断っておくと、ここは脱衣所から出た小さなロビーで。 大浴場からはの匂いにしては近い。
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