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いやはや、人間はまさに人間だ。
納得して、私はゆっくりと体の向きを変えた。男もこちらを振り向く。それはとても私好みの顔で、なるほどうまくできていると思った。
「ねえ。あなたって男なの?」
彼の首に腕を回しながら、私は尋ねた。
「それは君の望み次第だよ。君が同性の方に欲情するタイプの人なら、“僕”は今すぐ“わたし”になる。便利だろう?」
私の髪を手で梳き、彼は囁いた。
「なるほど、便利ね。じゃあ私が言えば、あなたはフリフリドレスの似合うゴスロリ美少女にだってなれるってことね」
「ああ」
「そう……、でも私、今のあなたが好みだから、そのままでいいわ」
「光栄だ」
彼に腰を抱き寄せられて、膝の上に跨がる。彼の体には温かみがあって、私にはなかった。不思議なものだと思った。
キスをする。唇の感触は確かに私を高ぶらせ、興奮させた。彼は、とてもキスがうまかった。
「──可哀想だから、最後にいい思いをさせてあげるの?」
合間に、またも私は尋ねた。男の目は変わらず優しく、まるでガラス玉のようだった。
「逆だよ」
「逆?」
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