夏の木

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「君の名前は面白いね。きのこみたいだ」 そんな失礼な事を言いだした目の前の彼女の容姿を説明させてほしい。 日の当たりかたでゲレンデの雪とも白磁とも取れる純白の御髪を肩まで伸ばし、猫の様な愛らしい瞳は慈愛を浮かべていた。 身長は163cm、体重は48kg。スリーサイズは74、62、74といったところ。たぶん、貧乳の部類に入ると思われる胸には中々の哀愁が漂う。 あぁ、忘れていた。彼女の名前は柊(ヒイラギ)、姓は大祓(オオハラエ)。誕生日は12月31日でAB型の16歳。 こんな詳細を知ってるのは僕と彼女が幼馴染という関係にあることが挙げられる。 昔から仲の良い僕たちがこんな風に名前を貶しあう様な仲になったのには深い訳があって、今からそれを語ろうと思う。 昔、むかーしの話しです。とは言っても4年前になるのだが、僕たちの仲はそれはそれは深い物で結婚の約束までしていた程だ。 現在、高校2年生である彼女の年齢は17。つまり13歳だから中学生の時だ。 勿論、物事の善悪の分別くらいは付く年齢ではあった。だがそれを無視するだけの愛が僕たちの間にはあったのだ。 ま、嘘なんだけどね。 そりゃそうだ。きのこみたい、なんて言われるだけならまだしも、その前に彼女は『君の名前は面白いね』なんて言っていたのだ。 どう考えてもこれは初対面の人物へと当てる言葉だろう。 さて、ではどうしてこんな風に僕が全力で嘘を吐いたかと言うと、深い意味なんて無い。 暇つぶし、というのが一番あっている。
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