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「ちょっと前に事務所から連絡があっただろう? あたいはテメェの『一生に一度の願い』を叶えに来たんだよ」
「『一生に一度の願い』……ですか?」
突然家に女神が押し掛けてそんな事を言われる何て出来事が起こったら、平凡高校生の頭が理解出来る範疇を越えてしまう。
「それじゃあ、帰ってくれませんか?」
何も考えずにしたその願いは、飾り気の無い和人の嘘偽り無い本心から出たものだった。
だが、それを聞いた女神は一瞬だけ全ての動きを止め、すぐにニヤリと唇の片端を上げた。
「面白ぇ冗談だ」
決して面白くて笑っているとは思えない笑みのまま、その女神は手にした鉄塊で和人の眉間をゴリゴリと押す。
「お返しに、テメェの脳味噌の色でも見せてやろうか?」
その台詞を口にした女神の目に特に変化は無い。凄むとかそういう次元でなく、本当に躊躇無く実行しそうな恐ろしさがその目にはあった。
「も…勿論……つまらない冗談ですよ」
両手を上げたまま、和人はさっきトイレで用を済ませていたタイミングの良さに感謝した。
……少なくとも目の前にいる女神以外に……。
※※※
ニナ=インフェニティとその女神は和人に名乗った。
「……要は、人間には一人一回だけ『一生に一度の願い』が叶う権利が与えられているんだよ。百年前に就任した神様のマニュフェストでな」
和人に買って来させたウーロン茶を飲みながら、ニナはそう説明した。
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