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「そんだけだッ! オラ、さっさと言えッ!!」
脅迫そのものの催促を受け、和人はガタガタと震えながら何度も頷く。
「そ…それじゃあ、今日の夕飯は唐揚げが食べたいです……!」
震える和人の願いを聞いたニナは、左手に持つドクロ水晶に目を向ける。
つられてその水晶を見る和人だったが、特に変わった様子はない。
「……テメェ、その願い……本気で願ってねぇみたいだな」
ピキピキと額に青筋を浮かべ、ニナは親指でケルベロスの撃鉄を起こす。
ダブルアクションのケルベロスには本来意味の無い行動だったが、無機質で冷たくカチリと鳴る撃鉄の迫力は、和人を怯えさせるには十分だった。
「ど…ど…どうし……て?」
「このドクロが光ってねぇからだ! 本気でお前が願い事を言えゃ、このドクロが光るんだよ」
ニナの指がケルベロスの引き金に掛かる。
「脳みその風通しが良くなる穴でも開けりゃあ、そこからクソをひり出すみてぇに願い事が出てくるか?」
冷たい。
和人が生まれて初めてみる、本当に冷たい眼だった。
(あ……死ぬ……)
これも初めてだった。初めて和人は死を覚悟した。
蛇に睨まれた蛙の様に……蜘蛛の巣に掛かった蝶の様に……妻に浮気がばれた恐妻家の夫の様に……死を覚悟せざるを得なかった。
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